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商売をしている中で重要な数値が何個かあります。
重要というか評価に直結する目標数値がどの会社にもあります。
売上・粗利・経費・在庫などは日々管理する重要な数値です。
日々努力しているなかで数字を積み上げ最後に営業利益を達成させるのが、私たちの仕事です。
利益を出すにはバランスが大事
営業利益を出すためには、目標数値をバランスよく追いかけないと達成できません。
売上ばかり追って安売りしては経費を回収できませんし、在庫を減らすために売れ筋の発注をとめたら売上・粗利が減ります。
粗利率を上げる為に競合など気にせず単純に値上げをすれば率は上がっても額が追いついてこないこともあります。
もちろん差別化を図って他店にない商品を導入することもよくありますが、認知度が低いとあまり売れずに坪効率が下がることもあります。
やはり理想は競合と差別化できて、充分な利益を確保しながら多く買っていただくことです。
誤解を恐れずに言えば、こちらが買ってほしいものを買ってもらえるように誘導することが必要です。
一方で考え方としてお客様が欲しいものを準備してお出迎えするというのが正当な方法のように思えます。
もちろんその努力は必要ですが、ニーズが顕在化しているものは競合も用意しますし、成熟し多様化したお客様すべてに対応することは難しくスケールメリットも出ません。
ひと昔前の泥臭く売り切る力が再度問われています。
そしてそのようなインプロ強化が最優先の店舗の提案力が問われるとき、一番即効性があり万能に近く、全てに効果があるのはPOPです。
ある程度の歴史があるので本屋さんに行けばいろいろな参考になりそうな本が並んでいるのもいいところです。
その中でもおすすめするのはこの本です。
「バカ売れ」POPが面白いほど書ける本 中山マコト
何冊かPOP関連の本を読んできましたが、どれも同じように良く、同じようにもの足りません。
一番の問題はPOPそのものの出来映えをどうよくするかという本が多く(勿論重要です)マーケティング理論というかターゲットをどのように選定しその層にどう売るかという視点が入っていないことです。
それは著者の方が悪いわけではなくマーケティング理論は別に勉強することが前提となっているからで両方を一気にとることは難しいということだと思います。
またセイリングメッセージがマーケティング上あまり重要視されていなかったこともあると思います。
ようはこういう本の読者はもともと書くことへのモチベーションがあり事例集や「作品」がどうすれば見栄えが良くなるかに興味がある層なのでしょう。いわゆる実際に手を動かす方を対象にした本だということだと思います。
もちろん現場のスタッフに書かせて単品の売上が何倍になった!スタッフのモチベーションが上がった!などの細かい事例の積み重ねは大事です。
しかし管理する側全体の数値改善を考えるなら強力なツールだからこそ体系的に考えて、こんな目的で こんなPOPを アナタのセンスで 作って欲しいんだ!と伝えたほうが、効果測定や改善がしやすいですし、良い事例が出てきて水平展開したいときも一度背景を語り、狙いと検証した効果を添えた方が展開がスムーズです。(POPは作った人のモチベーションは確実に上がりますが、共有すると送られた側は貼る事が目的化してしまい効果が出るどころか邪魔になってしまうこともあります。)
そしてチラシ広告の効果が薄れインストアプロモーションの重要性がますます上がるなか、お客様への訴求ツールの代表であるPOPの重要性はますます高まっていると思います。
チラシは予算まで設定され関わっている人もキーパーソンです。
しかしディスカウントではないチラシはよほどのブランドや手法を確立していないと経費倒れに終わてしまいます。
しかし粗利だけで見れば戦略的にPOPを使った方がはるかにコントロールが容易です。
なのにそんなにコストがかからない為か真剣に考慮されていることは少ないかと思います。
ようはプラスオンされればいいなという扱いです。
これはチャンスです。特に売上分母が小さく、店舗数もそんなに大きくない会社にはめちゃめちゃコスパがいいツールです。ぜひ体系的に考えることをおすすめします。
そんななかでこの 「バカ売れ」POPが面白いほど書ける本 はある程度、POPの役割から作成の仕方などを体系的に書いているのでおすすめしたいと思います。
まずPOPの役割をきちんと意味づけています。
シンプルでわかりやすいです。
もちろん本来のPOPとは
Point of purchase advertising(ポイント・オブ・パーチェス・アドバタイジング/購買時点広告)
ですがこんな呪文には意味がありません。
上記の意味付けはいわゆるAIDMA(アイドマ)に対応しています。
AIDMAの法則とは、消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるよ。
Attention(注意)
Interest(関心)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)
このうちAttentionを「認知段階」、Interest、Desire、Memoryを「感情段階」、Actionを「行動段階」と区別してお客様の購買行動を分析・追体験するものです。
ようするにまず気づいてもらわないといけないし、役に立ちそうだと思ってもらわないとダメだし、買ったたほうがいいと思ってもらわないと売れないよということです。
P パッと見て 「足を止めてもらう」
まず上手い下手関係なくPOPが効果を持つ理由が何か書いてあれば認知される確率が上がるということです。
例えばすごく商品パッケージが魅力的で見て手に取ってもらえれば、買いたくなるよねという商品があるとします。
しかし冷蔵品で平ケースに並べると肝心のつらが目線に入りにくくケースの手前までいかないと目に入らないとします。
来店している人(仮に1000人)を分母として気づいた人(仮に100人)を分子とするとなにもしない状態では50人が購入したとします。
この状態で仮に商品の写真を撮って印刷して手書きで「おすすめ」なり「入荷しました」なりPOPとしてスタンドにつけて見せればおそらく簡単に倍以上うれます。
ようは離脱率を低くすればいいだけですから。
最初は
来店1000→商品に気づく100(離脱率90%)→購入する50(離脱率50%)
POPを立てると
来店1000→商品に気づく200(離脱率80%)→購入する100(離脱率50%)
これだけで倍売れます。
この計算の仕方は以前取り上げたマインドフローの考え方です。
O オッと思わせ 「興味を持ってもらう」
上記をもうすこし分解すると
来店1000→気づく200(離脱率80%)→購入する100(離脱率50%)=
来店1000→気づく200(離脱率80%)→興味も持つ150(離脱率25%)→購入する100(離脱率34%)
になるとします。
ここで先程のPOPに類似商品に対する優位性や商品ストーリー、具体的な調理法、意外な使い方などを一言書き加えれば
来店1000→気づく200(離脱率80%)→興味も持つ180(離脱率10%)→購入する118(離脱率34%)
と購入率が上がる可能性が高いです。
そしてこの部分が商品知識やターゲット選定がもっとも問われるところです。
P ピンときて買う! 「買ってもらう」
そしてここで 期間限定 スペシャルプライスなど今買う理由を提示して背中を押してあげれば
来店1000→気づく200(離脱率80%)→興味も持つ180(離脱率10%)→購入する144(離脱率20%)
POPをつけただけで売上が約3倍になりました。
もちろんシュミレーションだから数字なんていくらでもつくれますが、実際に店舗でやるとこれくらいの店舗格差はゴロゴロでます。
そして売れる要素が値段だけではないと気づくと強気の値入ができるようになるので、粗利もどんどん上がっていきます。こうなる楽しくなるので新しい商品にもどんどんチャレンジできて差別化もしつつ利益も出る勝利のスパイラルに入ることができます。
ただ、上記のAIDMAの数値に変化がないようなPOPは効果が薄いです。
例えば遠くから見えるように商品を積み上げているところに、商品パッケージの写真のPOP
をつけても気づいてもらえる人数(確率)は増えないでしょう。
また、店頭ににんじん、たまねぎ、じゃがいもを積み上げて「今夜はカレー!」と書いても、お客様の頭に新しい情報が入ってこないので、このPOPはあっても無くても売上は変わらないと思います。お客様の役にたっていないからです。(しかしマイナスは少ないのでやらないよりはやった方が良いです。数値が変わらなかったという事実が出てきたらPOPを改善する糸口になります)
ただPOPを付けるだけでも効果があるのに、こういうマーケティング考え方に当てはめると失敗要因・成功要因がつかみやすく改善がしやすいです。
気をつけてほしいこと
そしてきちんとマーケティング的に考えた方が良い理由のひとつは売れると楽しくなってなんでもかんでもPOPが付き始めることです。売場がPOPで埋まってしまい肝心の売りたい物が結局目立たなくなってしまうことです。これは「POP公害」とよぶ方もいるくらいのPOPあるあるです。(でも失敗しなければ検証できないので、やった方が絶対良いです。やらない理由を見つけるのは簡単です。)
そこで相乗積・在庫コントロールなど数値管理の面から何を売りたいのかをきちんと基準を持って選定しこの商品を売り切るんだという目的をきちんと設定したほうが業績改善には良いと思います。もちろんスタッフの自主性は大事ですから、作ってくれたものに対してはきちん評価し多くなりすぎたら理由を告げて間引いていくのが良いかと思います。
相乗積についてはこちらもご覧ください。
マーケティングが大事!
またPOPを作るときにVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の視点も取り入れると良いと思います。
難しいことではなく VMDの基本の
VP(ヴィジュアルプレゼンテーション)=売り場の雰囲気作り
PP(ポイントプレゼンテーション)=カテゴリーのおすすめ
IP(アイテムプレゼンテーション)=単品訴求
の考え方でなんの為にこのPOPを付けるのか明確にしておくことで、狙いにふさわしいPOPを作ろうということです。
例えばトロピカーナを売ろうとして効能を書いたら、オレンジジュース全般にあてあまってしまたらIPのつもりがPPになってしまっているよ!ということです。
(何度もいいますがそれでもやったほうがいいです。)
現状の数値分析やターゲット戦略でせっかく目標を決めたら、それに最適なPOPを目指しましょう!
POPはいろいろな販促のなかでもコストがとにかく低いので何にでも気軽に試せます。
そして効果はてきめんです。
POPの別名は「もう一人の販売員」。戦略のいきつく先は「人」ですから自分を投影し高めるのに最適なツールです。
そして効率化のなかでお客様とのインターフェイスを大きく担うPOPを研究するのは大切な学びに直結していると思います。
これを使わない手はありません。今すぐ始めましょう!
(マーケティングの勉強もね)
マーケテングについてはこちらもどうぞ
余談
私がPOPの力に気づいたきかっけは、まだプライスカードを一太郎みたいなワープロやテプラなどで作っていた時代に、たまたま手書きPOP研修を受けたことです。
マッキーなどでPOP文字を書く簡単な研修を受けました。
それでおすすめベスト3や重点販売商品のおすすめ文を作ると本当によく売れました。
対面販売の業種でしたので、販売員はそれなりの数いましたが効率がものすごくあがりました。
オレってすごいだろうと思っていたら、字がとても汚い部下が僕もやってみると言い出しました。本人も字が汚いことは自覚していたようですが、筆ぺんで書けば味のある文字になるんすよ!といってニヤニヤしながら自分が担当している部門のその月の重点商品に「僕のおすすめ 自信あります!」みたいなものを付けました。
完成度でいえば最低のそのPOP。でもこれが売れたんです。
このPOPともいえないアイキャッチが効いたのか、本人のやる気かはわかりませんが、売れたのは事実です。
それからいろいろな売り場でPOPを作成し時代も便利になってPOPなどが簡単に作成・共有できるようになりましたが、付ければ必ず売上は上がります。
絶対に落ちません。
なんでもやってみるものだと思った、かなり昔の思い出です。
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