今回おすすめしたい本は
『レイバースケジューリング「店舗運営の生産性向上」思想と手法』村上 忍 著
です。
はじめに断っておくとこの本の想定読者は経営者です。
現場のスタッフがそのまま流用できる項目はほぼありません。
でも題名にある「思想と手法」の思想は絶対に押さえておきたい科学的考え方の基礎になります。
流し読みでもいいので、一度目を通してみることをおすすめします。
自分のポジションが変化する度に、合理的な手法を模索する為に読み返す価値があると思います。
【リーダー・店長の最大の悩み】
現場責任者にとって、売上・利益と並ぶ悩みの種は、シフト管理だと思います。
シフト管理以前に、シフト作成すらままならず、ぎりぎりの人数でなんとかごまかしごまかし乗り切っていく。
そんな現場も多いのではないでしょうか。
よくあるシフトの作成パターンは、
- 固定シフトにして、曜日と時間で人を固める
- 都度シフトを回収して、人件費予算がクリアできるように、細かく調整する。
などだと思いますが、過不足なくシフトを組めることはほぼ無いですよね。
現場の人間にはよくわかりますが、シフトの作成はものすごく時間がかかります。
でもいざオペレーションが始まると、ものすごく、無理と無駄がでてきます。
現場に与えられた権限の中で最大のコストを占めるのは人件費なのに、うまくコントロールできる店長はほとんどいません。
(会社の基準はクリアするかもしれませんが、会社の基準は所詮前年比と人件費率です。商売として自分の金だったら絶対こんな使い方はさせないと思うことありますよね。)
これはなぜかというと、
などなど、ざっくりまとめてしまうと、
「お客様の対応もしなきゃいけないし、作業は山ほどあるし、本社の指示は意味が解らないし、予定通りに物事が進む業界じゃないんだよ。只でさえ忙しいんだから、みんなに目配りして教えている時間なんてないよ。とにかくお客様に迷惑をかけずに、予算さえ守っておけばいいんだ!」
ということです。
【ブラック企業はレベルが低い】
これでは、サービス業はブラックのままです。
わからないものに会社が金をだすはずがありませんから、結局、現場の一部の人がかぶって数字を糊塗します。
(勿論、会社だってわかってますよ。でも基本的に問題さえ起きなければ、結果は不確定・コストは確定なんてものに投資はしません。個人的にはいい人たちでも、役職という仮面をかぶればそんなものです。)
でもこの悪い循環はどこかで断ち切らなくては鳴りません!
なぜ、ブッラク企業がいまだにまかり通るのか?それは確信犯的な企業をのぞけば、きちんとした企業理念とそれを実現させる為の仕組み・手法という背骨がないままに、目の前の数字に一喜一憂しているレベルの企業が山ほどあるからです。
結果やプロセスが同じでも、目標とプロセスをしっかり設計していれば、次のステップが変わってきます。
ここがポイントで科学的な運営手法を取り入れないと同じところをループするので、失敗すると成長がありません。
ですが、これが最適だというマニュアルはありません。
自分の置かれたTPOに合わせて最適解をさがし続けなければいけません。
【ヒントになるのがこの本】
『レイバースケジューリング「店舗運営の生産性向上」思想と手法』村上 忍 著 です。
書かれたのはかなり前(2004年)ですので、現在とはかなりTPOが違いますし、スーパーの黎明期に活躍した人独特のアメリカ型チェーンストア至上主義が鼻につきますが、それはさておき、
参考になる思考・手法が盛りだくさんです。
経営者の判断の範疇の話がほとんどなので、思考体系以外に即明日から使える、という本ではありませんが、
RE基準の考え方やBプラスワーカーの設定、育成などはリーダーであれば絶対欠かせないものだと思います。
そしてこの本の中心を占めるのが人件費(人時)とオペレーションの関係です。
シフトに合わせて作業を割り当てるのではなく、固定作業を確定させ・変動作業を論理的に予測してそこに人を当てはめていく。その為に会社の枠組みそのものを革新していくというのが主題です。
ただ単なるシフトの工夫ではなく、チェーンストア独自のお客様中心主義へのアプローチの思想がメインテーマです。
只、事例がアメリカのエクセレントカンパニーなので、雇用形態・労働法制が違いますし、欧米型のジョブ採用と日本型のメンバーシップ採用では雇用者・被雇用者のパワーバランスの軸が違います。
只、良いものは国境を越えて良いはずです。なにか取り入れることができないか、なんでも参考書にしてしまいましょう。
多民族国家ではマニュアルによるオペレーションは必要不可欠のようですが、日本もそうなりつつあります。
人種だけでなく、価値観の多様化と世代間での中心意識の変化で、大事なものが人によって大きくことなってきています。
全員が同じ価値感を共有できることはだんだん少なく抽象的になっていますので、もともとそういう多国籍文化にある知見を活用するのもありです。
この本でLSOに興味を持ったら日本ではサミットの事例が有名なので、手始めに参考にするとよいと思います。
シフト作成や人の採用にはその企業の本音がでます。同じお客様第一というスローガンでも、商品のディスカウントで喜んでいただくのか、細かい要望に一つ一つ答えていくのか、最高のものを高価格で期待に応えるのか。
それぞれに合った、人材や人数があります。
そこにはやはり思想が重要で、競合で○○だったからとか、今まではこうやってきたからというのは手抜きの言い訳でしかありません。
人に関わることは、その会社の本質を深く考えることですから、リソースを充分に割く価値があると思います。
【本当に大事なこと】
でもそんな細かいことより、常に科学的な手法を意識することで、自分を成長させることが大事です。
科学的にこだわるということは、再現性があるということですから、言語化して説明することができます。
もし会社にそのような習慣がなければ、これをやり続けると間違いなく周囲から浮きます。
でもそれがいいんです。レイバースケジュールのみならず、独自の視点で発信し続け、新しいことに挑戦し続けていると、いざ現状に詰まってくると思わぬところで意見を聞かれたりします。
常に言語化にこだわって仕事をしているのですから、即採用とはならなくても、必ずその説明が相手の頭に粘るはずです。体系化された手法・数字はそれだけ強い説得力を持ちます。
もちろ具体化やお試しの手法なども提案できれば、選択肢の一つに意見が取り上げられることもでてきます。
そこからはテコの原理で自分のポジションをとりましょう。
自分の成長と会社の成長が同一軸にのれば、そんな素晴らしいことはありません。
もちろん、より成果を出すために、マーケティングや物流・経理・財務・人事など学ぶことは多くあります。そして周囲から浮くのはかまいませんが、嫌われてしまうと、もともこもないので相手に対する敬意も忘れないようにしないといけません。
※意識的に学び始めると、周りがバカに見えることがありますが、大抵勘違いです。結構みんな頭はいいです。ただ体系的ではないので、発信が下手なだけで、相手の評価はきちんとできます。
きちんと敬意をもって発信すれば、ほとんどの場合きちんと返してもらえます。
そしてせっかく学ぶのですから、どんどん発信していきましょう。
行動を変えてもいいし、誰かに説明してもいいし、企画書を出しても。改善案を提案してもいいです。
体系的かどうかは再現性が鍵ですから、説明をきちんとできないと意味がありません。
そしていざ発信すると自分が一番、矛盾に気づきます。自分が一番学べます。
人は思っているより、他人のこと四六時中気にしているわけではありません。これは皆、頭ではわかっています。孤立を恐れる必要は全くありません。馴れ合いで沈んでいくことこそ恐れる必要があります。
まとめ
僕たちは前の世代(上司・先輩の時代)よりレベルを上げなくてはいけません。
成功・失敗ともに事例が増えるわけですから当たり前です。
そして次の世代には、もっとレベルを上げてもらわなければいけません。
その為に、考え続け工夫し続けることをやめるわけにはいけません。
だから、論理的に体系的に科学的に物事を考える習慣を身につけましょう。
これは精神論だけで踏ん張るより苦しいかもしれません。
でも成功しても、失敗しても誰かに伝えることができるフォーマットにしておけば、
後の人はよりリアルに追体験ができるので学びが深くなります。
もちろんこの後の人には、成長した自分自身も入ります。
他人の為ではなく、自分の為です。でもどうせだったらひとの役にも立ちたいものです。
これが勉強の本質だと思います。
お読みいただきありがとうございます。
コメント