小売りの基礎数値④ 相乗積(MM マージンミックス)をマスターしよう

小売の基礎計算
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毎月、来月の売上・利益の目論見をたてていると思います。

全体の売上予算・粗利予算は決まっています。

それを実現する為に、部門毎に売上・粗利率の目論見をブレークダウンしていると思います。

エクセルを使えば簡単にできますが、積み上げ式(この部門は○○円・○%いくだろう)で出した合計と全体の予算にギャップが有る時は、現状の商売を変化させて差を埋めなければなりません。

でも、売上を上げる為にチラシを強化すると、利益率が下がります。

ならば利益率の高い部門を売り込んでいこうと思って、例えば菓子部門の売上目標を10%アップさせる!などの試算をします。

でもこの時、全体の粗利率が何%アップするのかわからないと予算が達成できるのかわかりません。

その時などに使うのが、「相乗積」といわれるものです。

相乗積ってなに?

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まず先に計算式から

構成比×利益率=相乗積 全部門の相乗積の合計=全部門の利益率

になるよという公式です。

例(厳密にいえば相乗積に単位はありませんが、商売では%を使います)

 

売上

構成比

利益率

相乗積

粗利額

検算

加食

10,000

33.3%

20.0%

6.67%

2000

 

青果

15,000

50.0%

25.0%

12.50%

3750

 

精肉

5,000

16.7%

30.0%

5.00%

1500

 

合計

30,000

100.0%

 

24.17%

7250

24.17%

各部門の、構成比×利益率=相乗積の合計と、

売上に利益率を掛けて出した粗利額合計を、売上合計で割った

全体利益率が同じになっているのが判ると思います。

相乗積を試してみよう

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では、予算が35000(22%)なので、加食で+5000のチラシを打つという対策を取ったとしましょう。

その時、加食の粗利率は16%になりそうだとした時、全体の粗利率は何%になるでしょう。

 

売上

構成比

利益率

相乗積

粗利額

検算

加食

15,000

42.9%

16.0%

6.86%

2400

 

青果

15,000

42.9%

25.0%

10.71%

3750

 

精肉

5,000

14.3%

30.0%

4.29%

1500

 

合計

35,000

100.0%

 

21.86%

7650

21.86%

売上予算は達成できそうですが、粗利が下がってしまいました。

では、加食のチラシを+3000で部門粗利17% 青果のチラシを+2000(24%)にしたらどうでしょう

 

売上

構成比

利益率

相乗積

粗利額

検算

加食

13,000

37.1%

17.0%

6.31%

2210

 

青果

17,000

48.6%

24.0%

11.66%

4080

 

精肉

5,000

14.3%

30.0%

4.29%

1500

 

合計

35,000

100.0%

 

22.26%

7790

22.26%

売上も利益も予算クリアーできそうです。

その後は、加食を13000(17.0%)にするために、加食部門内での販売種類毎に相乗積を計算

します。

 

売上

構成比

粗利

相乗積

チラシ

4,000

30.8%

0.0%

0.0%

インプロ

2,200

16.9%

25.0%

4.2%

定番

6,300

48.5%

22.0%

10.7%

投げ

500

3.8%

30.0%

1.2%

合計

13,000

 

 

16.0%

予算

13,000

 

17.0%

 

この状態では粗利が1%足りないことが分かります。

なので、投げを増やして、チラシも原価売りから、少し利益を取れるように調整します。

 

売上

構成比

粗利

相乗積

チラシ

4,000

30.8%

3.0%

0.9%

インプロ

1,900

14.6%

25.0%

3.7%

定番

6,300

48.5%

22.0%

10.7%

投げ

800

6.2%

30.0%

1.8%

合計

13,000

 

 

17.1%

目論見

13,000

 

17.0%

 

結果この構成比と粗利でいけそうです。

しなければならない行動は、チラシの原価交渉と800分の投げの確保だということがわかります。

相乗積の応用

相乗積の応用として

 

売上

構成比

粗利率

相乗積

チラシ

4,000

30.8%

 

インプロ

2,000

15.4%

25.0%

3.8%

定番

6,500

50.0%

22.0%

11.0%

投げ

500

3.8%

30.0%

1.2%

合計

13,000

 

 

 

目論見

13,000

 

17.0%

 

それぞれの売上は決まっていて利益率も見込まれている時、チラシで何%利益を確保しなければならないか?も計算できます。

相乗積の合計が、17%にならなければ、いけないのですから

チラシの相乗積=17.0-(3.8+11.0+1.2)=1.0

相乗積=構成比×利益率 

1.0=30.8×粗利率 

粗利率=1.0÷30.8=0.324=3.24%

検算してみると

 

売上

構成比

粗利

相乗積

チラシ

4,000

30.8%

3.2%

1.0%

インプロ

2,000

15.4%

25.0%

3.8%

定番

6,500

50.0%

22.0%

11.0%

投げ

500

3.8%

30.0%

1.2%

合計

13,000

 

 

17.0%

目論見

13,000

 

17.0%

 

きちんと17%になっています。

 

なぜ 構成比×粗利率の合計が全体粗利になるのか・・・

 

なぜ 構成比×粗利率(=相乗積)の合計が全体粗利になるのか?

この部分はあまり触れられることはなく、とにかくそういうことなの!っていう教え方が多いですが、そんなに難しいわけではなく下の式の通りです。

        部門売上    部門粗利金額      部門粗利金額

構成比×粗利率=―――――― ×――――――――― = ――――――――

         全体売上     部門売上        全体売上

 

から上記式は 部門の粗利額を全体売上で割ったものの式変形だとわかる。

 

                 部門A粗利+部門B粗利・・・・部門Z粗利

全部門を足すと(構成比100%) ――――――――――――――――――――― = 全体粗利率

                        全体売上

 

※目論見などで構成比の変更で粗利のコントロールをすると、構成比が100%にならない時がありますが、

相乗積の合計(全体粗利率)を構成比合計で割ってあげると、正しい利益率がでます。

 

練習問題 

来月の自店の目論見を各部門・販売方法(チラシ・インプロ・定番・投げ)のマトリクスにして

目論見を作成しましょう

何の本でもいいので、お店の数値についての基礎本を通して読むと流れで理解しやすくなります。

 

前回の答え 

通常原価@90の商品を100個仕入れて、現物を20個つけてもらいました。

100円で完売した時の粗利率・額は?

売上100×120=12000

仕入90×100=900

                (  25  % 3000  円)  

5個廃棄したときの粗利率・額は?

                ( 21.73  % 2500  円)  

90個100円で売れて、15個90円で売れて、10個2割引き、5個廃棄したときの粗利率・額は?

(90×100)+(15×90)+(10×80)=11150

                ( 19.28  % 2150  円)  

80個100円、20個85円、10個2割引き、5個廃棄して、在庫が無くなったときの粗利率・額は?

(80×100)+(20×85)+(10×80)=10500

                ( 14.28  % 1500  円)  

チラシで80個60円、残りを120円で売った時の粗利率・額は?

(80×60)+(40×120)=9600

                (  6.25  % 600 円)  

チラシで80個60円で販売し10%以上の粗利を残したい時、残りをいくらで売ればいいでしょう

9000÷0.9=10000

{10000-(80×60)}÷40=130

                 (  130      円)  

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