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我々店舗型ビジネスを行うものにとって、天候ほどインパクトが大きく悩ましいものはありません。
どれだけお金をかけてチラシをうっても雨風には勝てません。
近年は毎年が異常気象。
どうにもならない天気や気候とどのように付き合っていくかが大きなポイントです。
しかし、OJTで教わってきた対策はあまり効果を上げているとは言えないですし、あまり再現性がありません。
どちらかというと、お客様が来ないものは仕方ないんだからおだやかな日に備えて準備しておこう(パートさん早く帰ってね)くらいの感覚でしかないと思います。
もちろんコストの使い方としてそれもありだと思います。
そこにニーズはある!
しかし、ある調査によると品揃えでの需給ギャップ(お客様があれば買うのに店が用意していない)によるチャンスロスは10%程あるといいます。
この10%は「ありさえすれば買う」ということですからお買い上げ頂ければ、新規獲得コストや販促(値引き)コストがかからない高粗利の商売がまだ眠っているということです。
無いから買わないというのはPOS分析に頼る商売の盲点です。ないものはデータに載りません。
この大きなパイをとりこぼさない為にしっかり因果関係の仮説を立て相関関係で結果を確認して知識をためなければいけません。
因果関係の仮説を立てる際、ある程度の客観的な知識がないと再現性が保てません。
スタートは自分の体感・経験でしょうがそれだけでは狭く弱いのでここは専門家の知見を借りましょう。
参考になりそうな本を紹介します。
この本の著者はLMD(生活気象マーチャンダイジング)という言葉を使っています。
WMD(ウェザーマーチャンダイジング)の方が人口に膾炙していると思いますが、WMDはデータ分析に基づいた気象と売上の相関MDでそれを裏で決定付けている因果関係まで仮説に含めるのがLMDということのようです。
売上と気象の関係に生体機能と欲求の変化の関係まで視野に入れるのが特徴だと思います。
因子というか関数が増えると説得力が増しますが、データが複雑化してしまいます。
定量的なものと定性的なもののバランスはそれぞれがとれなくてはいけませんが、だからこそ個性が出て差別化できますので、細かいデータのバランスより考え方を理解して引き出しを増やす為に知識は身につけておきましょう。
買い物のほとんどは衝動買い
よく耳にしますが、ほとんどのお客様はメニューを決めずに来店しお店で商品を見ながら取捨選択をしてお買い物をしています。インストアプロモーションの重要度が年々高まっていることは聞いたことがあるかと思います。
そのような状況では、本能が欲しがるというか、体が欲するものへの支出は抵抗が少なくお買い上げ頂ける確率がぐっと高まるというのは納得がいきます。
しかし、寒い、暑いは基準があいまいですし、26℃になるとアイスが売れるということだけでは春と秋の販促が同じになってしまいます。
これは相関だけを見ていると応用が効かせにくいということですので、考え方をお客様の体の状態に着目し、このような気象条件だとお客様の体はきっとこういう状態になるから、○○が欲しくなるんじゃないかというプロセスをひとつ増やした仮説をたてることが、検証・改善に役立ちます。
そのためにはLMDの理論は役に立ちます。
2つのポイント「セットポイント」と「四季による基礎代謝量の変化」
もちろんこの本にも季節に合わせた売り込み商品の一覧的なものは乗っていますし、業界の常識が崩れた瞬間のようなコラムもありますが、それらはもうスタンダードになっていますし、リストはどこでも入手可能です。
それよりも基本中の基本の考え方を頭にいれることで、プラスもう一品を考えられるようになることのほうが商売へのインパクトが大きいのでこちらの知識をみていきましょう。
基本は「セットポイント」と「四季による基礎代謝量の変化」の2つです。
この2つの体の働きが組み合わさり体の欲求になって具体的なニーズが生まれるというのがLMDのポイントだと私は思います。
いろいろな事例がこの本にも載っていますが基本的にこの2つの体の仕組みで解説されています。
ではみていきましょう。
人間の体は36.5℃(セットポイント)くらいを自立的に保とうとする機能があります。
気温が22-25℃のときが一番負担なくこのセットポイントを維持できるので快適に感じるということだそうです。
そして15-29℃までは自力で体温調整が可能な範囲のようです。
それを外れる15℃以下や29℃以上は自衛の行動をしなくてはセットポイントが保てない範囲だそうです。
夏になるとなるべく産熱を抑える為、基礎代謝が減る(カロリーを欲しなくなる)ピークは8月
この暑くなってくるに従って出てくる欲求が、暑熱需要 それに対応する商品が 昇温商品
冬になるとなるべく産熱する為、基礎代謝が増える(カロリーを欲する)ピークは2月
この寒くなってくるに従って出てくる欲求が、寒冷需要 それに対応する商品が 降温商品
基礎代謝というのは行動をしない状態で生きていくのに必要最低限のエネルギー消費量で消費エネルギーの3/4を占めるそうです。
その基礎代謝は夏と冬のそれぞれのピークで約1割差がでるそうで、人の行動に大きな影響を与えていることは想像しやすいと思います。
そしてそれぞれのピークに向けてゆるやかにモードを上下させながら循環しているということです。
その論理とデータから2月末の最高気温が15℃を超えると夏モードへ反転し、8月末の最高気温が29℃を下回る日から冬モードへ反転していくことが類推され、データ上も証明されているようです。
この体が求めるカロリーと外気の影響をミックスして顧客のニーズを判断しデータで検証していくのがLMDの真骨頂でしょう。
多くの事例がのっていますが、アイスの実例がわかり易かったので紹介しておくと、
- アイスクリームは2月末に夏モードに体が切り替わってから少し経過した20℃から売れ始める。
(昇温期で外気と産熱のバランスから暑く感じ始める温度が20℃)乳脂肪分があるためある程度カロリーもあるが、外気の上昇による暑さの解消に涼味が求められるから(仮定)
- 26℃を越えるころから低カロリーで冷たいアイスクリームが大きく伸びる
- しかし32℃を越えるとわずかなカロリーも体が拒否する為、より低カロリーな氷菓にほぼシフトする。
温度と商品の相関関係だけより、体がカロリーをどの程度受け入れるかという観点からも考えるとよりほかの商品にも応用が利くようになります。(本書にはおでんの例などがある)
売れると自信を持てば売れる
その他にもこの本には、年代別LMD 味覚からのLMD、異常気象・突発的な天気の変化にLMDの視点からどう考えるかなどが乗っています。オペレーションに関わることなので、一概に正解とはいえないものもありますが考え方の引き出しとして知っていれば損はしないと思います。
シーズンMDや52週MDでは取りこぼしてしまうニーズをいかに汲んでいくかが業績のわかれ目になることは、ビジネスをしている方なら痛感していると思います。
私も基本的に売上のほとんどは定番品・計画商品から作っています。
でもこの考え方を知ってから、細かい陳列場所の変更やフェイスどりの変更が先回りしてできるようになりましたし、
この仮説の立て方が筋が通るので大胆な数量を発注して売切ることができる場面が多くありました。
(これは本当にニーズがあったのか、自信があったから展開が大胆になり認知率が上がったのか、鶏と玉子の関係だと思っていますが)
いつも書いていますが、実務家は実際に使えなければ意味がありません。大きな方向性を決定すり為に様々な知識があったほうが良いということで、日々行なうことが変わるわけではなく、皆と同じ様に天気予報を見て一喜一憂します。
でもその中で少しでもプラスのアイデアを出し続ければそれは差が出てあたりまえです。
市場が縮まり、コストがあがり、きついことも多い業界ですが、商売が好きで続けているのだからこれは仕方ありません。少しでも価値を提供して利益を出す為には勉強と実践あるのみだと思います。
がんばっていきましょう。
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