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レジ袋の有料化の話題がニュースなどでとりあげられていました。
当たり前ですが消費者としては環境への配慮は理解はできるが負担が増えるのはいやだよ。という意見が大半のようです。
そんなニュースを見ながら、情報処理のコストが下がった社会では、費用は直接の受益者が払うのが当たり前の時代になっていくのかなと思い ABCの有用性が見直されるかな?なんて思いました。
ABCって何?
これを読んでくださっているあなたは、ABCといわれると何を思いうかべますか?
今回書いているABCはActivity-Based Costingの略 活動基準原価計算のことです。
”パレート分析”の方ではありませんのでご注意ください。
製造業やもしかすると卸売業の方には聞きなじみのあることばかもしれませんが、小売りではあまり聞きません。
ですが、製造業の費用体効果の測定や、コスト分析に命を懸けた管理方法のエッセンスを応用するのもいいのではないかと思いますので、入門書籍をご紹介したいと思います。
「原価計算」しているのに、なぜ「儲け」が出ないのか?
―コストを見える化する「ABC」入門-林總
おもしろいタイトルのビジネス本でおなじみの著者の方ですね。
なぜか毎回メンターの人物の設定が微妙な感じが私はしていますが、中身はおもしろいです。
基本は製造業の原価管理のお話です。
製造業のエッセンスを小売りにも
流通業と製造業は人件費に関する考え方が違います。(財務諸表の項目からして違いますから)
なので販売に携わる方は、原価をコストと読み替えるといいのかなと思います。
販売業をしていると、仕入れ値段は1円単位までコダワルことが多いですが、コスト(経費)に関してはなんとなく総額の増減を見ているだけのような気がします。ましてや間接部門の本社費などは税金みたいなものだという意識すらありますから・・・
最大のコストであることが多い人件費に関しても同様です。
なぜかというと、作業や仕事のそれぞれの計算された費用対効果の基準や計測方法が思いつかないからです。
せいぜい売上高人件費率や労働生産性程度しか計測していないように思います。
計測していないわけですから、分析を改善もそれを継続することも非常に困難です。
なにせ会社は予算を大前提に動きます。
予算とは達成すべき行動計画を金額に置き換えて表現したものです。
行動を金額価値に置き換えなければ予算が機能しません。そして現実はかかった総額に対してしかデータがないので総額、もしくは売上高比率をどうするか という大雑把なレベルでしかPDCAできないのが現状なのではないかと思います。
これではブラックボックスが多すぎてコスト管理もできませんし、部門を越えた方向性の統一もできません。
でも感覚的には気づいているんです。ものすごく無駄が多いことを・・・その無駄が賞賛されろことすらあることも・・・
もっと価値を産むはずの会社の共有財産を使い倒して自分の評価にしてしまっている人がいることも・・・
ABC(活動基準原価計算)はそれに対してある程度の回答を与えてくれます。
ABCのプロジェクトを組むとか全社を挙げて導入するとかではなく、思考の方法を覚えて自分の仕事に流用するのはとても大きな効果があります。
コンサルするわけでもなく会計の専門家でもないので、とにかく仕事に役立てばいいわけですから自分の会社・業界に浸透していない考え方はどんどん取り入れていきましょう!
ABCの論理を取り入れよう
まずは大事な単語を勝手に定義していきましょう。
リソース=経営資源(人・物・金・情報)
アクティビティ=リソースを消費して行われる作業を適切な単位でまとめたもの
コストオブジェクト=アクティビティを集計して費用対効果を知りたい単位
この3つで充分かなと思います。
大事なのは数値で表現する際に 単位×単価などに分解して改善に役立つようにすることです。
リソースであれば
人件費=分給×作業時間 通信費=1件×単価 印刷コスト=枚数×1枚あたり単価
アクティビティであれば
使用リソース=
(本来の期待価値を生み出したリソース+付随的に必要だったリソース+価値を生まなかったリソース)
コストオブジェクト=
(本来の期待価値を生み出したアクティビティ+付随的に必要だったアクティビティ+価値を生まなかったアクティビティ)
このようにして、なにが利益になっているのか、いないのかをきちんと分析することができるようになれば、どんぶり勘定の結果オーライ管理から一歩ぬけだせると思います。
また、価値というのは主観的なものですから、数値化されにくいものだと感情が優先されてしまいます。
例えば、セルフ物販で低単価の商売で品だしをしているパートさんが、お客様に世間話をされた場合どの程度までを是とするかは、ほぼ感情できまります。数字がないので決まった線引きはなくTPOと気分で評価されでしょう。
でも、パートさんの分給、納品を品出しするのに必要な人時、世間話をすることで上がる客単価と追加分給などを仮定の数字で計算すれば表現可能なルールができるかもしれません。
因果関係と相関関係の違いには注意が必要ですが、分解して統合すると自分の常識と違う費用対効果の高い行動があるかもしれません。仮定とはいえデータですから、PDCAも回せます。
どんぶり勘定ではなく、行動・作業に原価をつけるので、いままで誰々は儲けるよねー にまぎれていた価値を生まない部分や費用対効果が低い作業に対する見直しができます。
例えば
社長が進んでポスティングします!きっと地域性の理解の重要性をわかって欲しい待ちの姿勢の商売をしているスタッフに背中を見て欲しいのでしょう!数十年地域に密着して営業していた会社の幹部ですら・・・素晴らしいことです!
そしてそれを見た中堅幹部がなぜかポスティングをルーティン化します。目標は社長と同じ枚数ポスティングすること!おお!背中を見て動き出した人がいた!
・・・まぁ2人工で2000枚くらい配ったようですが・・・
固定費を使っているから追加投資なし!だからかはわかりませんが勿論効果の検証もありません。
でも幹部がそんなことをしなければならないくらい現場は手持ち時間がないほど効率化されているのでしょう!
でもポスティングなんて業者に頼めば2000枚くらい1-2万でやってくれますよね・・・それも商圏分析付で・・・
単価の安いスッタフでも手配くらいできます。
経営幹部2人分の日給が生み出した価値は、2万+単価の安いスッタフの時給くらいでしょう。
明らかな赤字です。そしてより経済的で効果測定できる手段を提案しづらくし精神論がまた大手を振るようになりました。もっと安い費用で高い効果が得られる方法は山ほどありるのに・・・
まぁこんな狂った事例は中小企業では日常茶飯事です。
しかし勇気をもってABC的なコスト論が計算・展開できれば
高い価値を生み出す=給料が高い と 給料が高い=高い価値を生み出さなくてはいけない
が一本すじが通ることになります。
作業の見直し、それを実行する人・時間の見直しは 戦略・組織・・責任・教育など会社のビジネスプロセスすべての見直しに通じます。
コストオブジェクトを顧客・店舗毎・販促などにして測定すれば 売上総利益ではなく営業利益(≒キャッシュフロー)で再評価できます。
コストを正しい受益者に負担してもらうことができれば、利益が増えますし受益者もサービスかコストか選ぶことができるようになり利益の配分の戦略的自由度がお互いに高まります。
これは外部顧客だけでなく、間接部門から現場部門へのコスト按分にも応用できます。
現場やお客様に利益をもたらさない習慣でやっている作業はやめるべきですし、より費用対効果がでるような改善で会社の利益を間接部門が増やすことができれば存在意義が高くなりアウトソーシングに怯えることはないでしょう。
全員が営業キャッシュフローの増加という数値をリソースの最適配分と質の向上で成し遂げるという方向を向けば部門間の対立や相互不信も減るはずです。
全ての部門がコストセンターでありプロフィットセンターでなければ強い企業にはなりません。
ABCは数値化しづらい数値をある程度論理的に設定・測定できます。
それでこそ企業の個性、使命にリソースを的確に投下できるようになるはずです。
この本のなかでおもしろいなと思ったのが
・価値を決めるのは対価を支払う顧客
・対価を支払うとは、ビジネスプロセス全体の原価を負担すること
・なので原価管理はビジネスプロセス全体に及ぶ
・消費した原価がいつも付加価値を生成しているわけではない。
という原則です。
今回の本は、製造業の話でしたが、卸売業のABCの本もあります。
興味を持たれたらお読みになってください。
さまざまな情報が蔓延するなか、業界の常識、会社の常識、部門の常識は力を失いつつあります。
常に新しい切り口を自分のなかに持つことは、環境に流されず本質を追求する有力な手段です。
ビジネスプロセス全体を改善していくには、サプライチェーン+お客様を理解しなくてはなりません。膨大な知識、ノウハウ、関係性が必要です。
逆にいえば、全てが改善対象=宝の山です。
人生を無駄にしないためには、勉強と実戦あるのみです。がんばりましょう!
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